#3HITORIGOTO

「入れ!」 「頼む。」 「お願い。」 「入って。。」 「落ちるな~」

 

その一瞬、時間が止まり、空気の流れがかたまり、一切の静寂の空間の中、動いていたのはただ一つのボールだった。日本の#12渡邊拓馬の右手から放たれたボールは、第4クォーターのブザーの音を聞きながら、力のない放物線を描き、2度、3度ゴールのリングを弾いた。ゴールの外側に転がり落ちそうになったが、会場全体がそれを許すことは無く、ゴールネットの中にその身をすべらせた。

 

静寂の後の地響きとともに、得点を示していた数字は「67-67」に変わっていった。

 

土壇場で同点に持ち込んだ日本は、続く延長戦では最後、普段なら”センター”を努めている#17山田選手が、右45度から3ポイントシュートでゴールを射抜き、ポルトガルの息の根を止めて勝利をつかんだ。

 

クロアチア人のコーチを迎えた新生日本は、今までとは明らかに違う一歩を踏み出した。
それは寄せ集めのオールスター選手達ではなく、「日本」と言う名の1つのチームだった。
延長戦の時にベンチに眼をやると、5ファールで退場していた#11網野選手以外の全員がペンチの後ろでアップをしている姿があった。チーム全員、一人一人がどんなときでも戦える状態で望めるように準備をしていたのかもしれない。

 

たかが1勝かもしれないが、この勝ちは大きい。
そして満員の日本人の観客とともに勝利のイメージを焼き付けたのは大きい。

 

会場の代々木第二体育館を離れる人々の多くの手には今大会のパンフレットがあった。
そこに『バスケ魂』と書かれた文字はひときわ大きく光っていた。

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